遺書に依頼者の名前が載っていなかった場合でも遺産を相続できたケース
分けるものはないと言われた状態から無事800万円を受けとれたケースです。
今回のケースは亡くなった方が遺言公正証書で遺書を作成していましたが、
その遺書には依頼者の名前が載っていなかったというケースでの相談でした。
ご相談のきっかけは、Aさんという大阪在住の40代の男性から届いたご相談のメールでした。
ホームページをご覧になって、ご相談のメールをいただきました。
そのメールの内容は、
「父が亡くなったと、父の後妻さんから連絡がありました。
父が遺した遺書には、『後妻に全ての遺産を相続させる。』と記載されていて、私の名前は載っていませんでした。
それで、父の後妻から『遺書には、遺産は私に全て渡すことが書かれてあるので、分けるものはありません。』と冷たく言われてしまいました。
なんとかする方法がないか相談させて頂きたいと思います。
実の父の遺産を受け取ることはできないのでしょうか。」
というものでした。
次の日、こちらよりAさんに折り返しのお電話させて頂きました。
お電話で、ご相談の内容を確認させていただいたうえで、「遺書に名前がなくても受け取ることできることがありますよ。」とお伝えしました。
Aさんから「もう少し詳しく話を聞かせてほしい。」とのことでしたので、その電話で来所のご予約を入れ、資料をもって来所いただくことになりました。
数日後、Aさんは、奥様と一緒に相談に来られました。
そのときに、後妻さんより届いたお手紙を持ってこられました。
はじめに、お手紙の内容を拝見させて頂きました。
内容は、
・平成●年●月●日に、父が亡くなったこと
・父がのこした遺書があること
・父がのこした遺書遺産は私に全て渡すことが書かれてあるので、分けるものはありませんということ
とだけが書かれていました。
遺言公正証書とは、公証人と証人2人が立ち会って作成された遺書のことです。
Aさんは、本当に、「いきなりこれが届いてびっくりしている。」というような感じでした。
それから、Aさんと父と母との関係などをお聞きさせて頂きました。
Aさんのお話は、
父と母は、私が小学生の頃に離婚しました。
両親の離婚をきっかけに、私は母と大阪で生活し、父は北海道で生活することになりました。
両親が離婚したあとしばらくの間は、行き来がなかったそうですが、大人になってからは、年に何回かは父の所に遊びに行っていました。
父は、亡くなる何年か前に、体調を崩して入院することになりました。
父が入院してからは、病院に定期的にお見舞いに行くようになりました。ある日、病室で父と話をしていたところ、父より「私が死んだら、預貯金などの遺産はおまえにやる。」という話がありました。
私は、強気な父からそんな言葉を聞いて、本当にびっくりして、父に、「そんな縁起でもないこといわないでほしい。」といいました。
その後、体調が悪化し父の意識がない状態になってしまいました。その後も父が回復することを願って、お見舞いにいっていましたが、後妻さんからは、「もうこないでほしい。」と言われていまい、父の見舞いに行きにくくなってしまいました。
そして、ある日突然、後妻さんから例の手紙が届きました。
その手紙が届いたのは、父が亡くなってから10カ月くらい経ってからでした。
父が死んだことも知らされなかったので、お葬式にも行けず、非常にくやしい。
そのうえ、父が「お前にやる。」といっていた遺産も後妻さんにとられてしまうのは納得できないとおっしゃっていました。
このような話を聞き、Aさんの場合は、「遺留分」というものを請求することができます。
遺留分の請求は、お父様が亡くなったことを知ってから1年間請求できるので、今からでも請求できます。
とお伝えし、さらに詳しいお話をお聞きしました。
依頼者のAさんと亡くなられたお父様の家族構成は、
※家系図挿入
依頼者のAさんは前妻との間に生まれた子供の長男になります。
お父様が遺書をつくっていなかった場合の遺産分割では下記のようになります。
後妻 - 全体の1/2が配偶者の相続分。
子供 ? 全体の1/2が子供の相続分。
今回のケースでは子供が4人いるので、この1/2を頭数の4で割った1/8が各人の相続分となります。
前妻 - 離婚しているので、相続分はありません。
これに対して、遺書がある場合は、原則として、遺書の内容に従って相続分が決定されます。しかし、今回のケースのように遺書に名前が載っていない場合は、本来受け取る額の1/2相当(「遺留分」と呼ばれています。)を受け取ることが出来ます。
Aさんの場合は、1/8の半分ですから1/16相当を受け取れることになります。
ここまでお話しましたところ、Aさんから「お願いします。」というお話があり、正式に受任させて頂きました。
これより、本格的な調査を始めていきます。
具体的に行ったことは、
遺産の調査、
相続人調査、
持ち分の計算、
相手方との交渉、
という手順で進めました。
亡くなられたお父様の遺産全体を調査し、現預金、土地など合わせ、依頼者のAさんが受け取れる遺産、最大で請求できる金額は約1000万円となりました。
ということで、請求先である後妻の弁護士に1000万円請求致しました。
その時点での、相手方からの回答は100万円なら支払います。という返答でした。
その後、数回の話し合いを相手の弁護士とおこない、最終的に「800万円支払います。」という譲歩を引き出すことができました。
ここで、こちら側が応じなければ調停や裁判をしなければなりません。
依頼者のAさんに上記の経過をお伝え致しました。
また、「裁判になった場合、不動産の評価の仕方によっては、800万円以下と評価される可能性があります。この金額であれば、申し分ないと思う。」と私の考えを正直にお伝えしました。
依頼者の手元に残る、最大限の成果と思います。
遠方で調停、裁判をすることになると交通費や日当などが、掛かるので、そんなに受け取れる額は大きく変わらないということです。
依頼者のAさんも納得頂き800万円で話がつきました。
最終的には、相手方との合意書も作成し、無事、お父様の遺産の受けとる権利のある800万円が手元に入ってきました。
※お客様のプライバシー保護のため、お名前や地名など、実際の相談内容と異なる部分があります。